第1回照明学会東京支部クロス・トーク「カラダを拡張する光」 実施報告

第1回クロス・トークが2023年4月17日(月)、代官山ヒルサイドテラス ヒルサイドプラザにて開催されました。テーマは、「カラダを拡張する光」。

あなたは、体中の感覚を呼び覚ますようなパフォーマンスを体験したことはありますか?
心地よくもあり、刺激的でもあり。あっという間に舞台の中へと引き込まれてしまう――――――
そのような体験は一体どのように生み出されているのでしょうか。
そのとき光は、私たちにどのような影響をもたらしているのでしょうか。

本企画では、表現の最前線を担う3名の講師をお招きし、3つの要素『演者・空間・視覚』の視点からその答えをひも解きました。

最初にご講演いただいたのは、狂言師の三宅 藤九郎様です。

鏡板の松と均一に照らされた照明による最小限の要素で構成された狂言の舞台の説明の後、実演を行っていただきました。三宅様の発声と所作によって、限られた舞台が一気に私たちの意識の中で旅の道中や都の風景が広がり、からだと意識の拡張を体験できました。最後に第1回目のイベントということでお祝の演目を実演いただき盛大な拍手の中で講演を終えました。


舞台の構成について説明

狂言の実演風景

続いて、照明デザイナーのヒナゴ アンダーソン様にご講演いただきました。

音楽のジャンルに応じた照明デザインの考え方についてご講演いただきました。オーケストラの舞台でゴボを使うことで曲のイメージをより増幅するような演出がなされた事例が詳細されたほか、公園のライトアップでは屋外にミラーボールを設置して風の揺らぎでミラーボールの光が漂う光景など舞台照明を用いた新しい空間表現を解説いただきました。


コンサート照明の概略説明

コンサート照明の事例紹介

続いて、東京大学教授の筧 康明様にご講演いただきました。

光と素材、テクノロジーを融合させた多くの作品を紹介いただきました。アルスエレクトロニカ2020に出品した、シャボン玉と携帯電話を連動させ、東京から携帯電話に息を吹きかけ、それに連動した形でオーストリアでシャボンを飛ばすことで、気持ちをオーストラリアとつなげるなど意識の拡張の作品をご説明の他、ガラス管の中で熱せられた金属の熱を音に転換する作品など、一つの事柄をテクノロジーが媒介することで違うものやことに拡張および展開させる作品をご紹介いただきました。


作品の紹介

研究室の様子

質疑応答の時間には、御三方へ「能と狂言の違い」や「アーティストや演出家との意思疎通」などについて、活発に質問が挙がりました。

後半のパネルディスカッションの部では、実行委員で用意させていただいたトピックについて、御三方に自由に選択していただく形式のディスカッションにしました。

講師の皆様は、「所作×アドリブ」、「見せる×見せない」、「瞬間×持続」、「照明の可能性」の4つを選択されて、それぞれのお考えをお話してくださいました。

最後になりましたが、本イベントは2020年に開催予定でしたが、新型コロナウィルス罹患症の流行に伴い延期となり3年越しの開催となりました。そのような状況の中でも講師をお受けいただいた三宅様、ヒナゴ様、筧先生をはじめ関係者の皆様とご参加いただいた皆様のご支援とご協力に感謝を申し上げます。

照明学会東京支部では、引続き世の中の様々なトピックにアンテナを張り、新しい切り口で照明や光について考えるイベントを企画してまいります。

今後も、イベントへの参加をお待ちしております。

クロス・トーク委員会 記

メンバー
石井 里佳(日建設計)
伊藤 大輔(日本工業大学)
大木 知佳子(大林組)
小笠 舞穂(鹿島建設)
木村 靖(パナソニック EW社)
小網 双葉(日本大学)
小山 憲太郎(コヤマケンタロウデザイン事務所)
篠原 奈緒子(東海大学)
鈴木 直行(遠藤照明)
谷川 あゆみ(日建設計)
陳 何苗(パナソニック EW社)
中尾 瑠衣(東芝ライテック)
野本 麻貴(大成建設)
藤田 康道(パナソニック EW社)
松本 潤
溝田 理沙(大林組)
門馬 英一郎(日本大学)
柳田 格二(東芝ライテック)
吉澤 望(東京理科大学)
吉田 綾香(パナソニック EW社)