一般社団法人照明学会関西支部 2025年 学生照明デザイン競技 受賞作品

照明学会関西支部
2025学生照明デザイン競技 審査結果報告

 一般社団法人 照明学会 関西支部では、関西エリアの専修学校、各種専門学校、高等専門学校、短期大学、大学、大学院で学ぶ生徒、学生のみなさんを対象に「2025年 学生照明デザイン競技」を開催しました。本競技は、各種光源を用いた照明器具の設計・デザイン・機能企画の多岐にわたる提案を求め、照明器具設計分野の人財育成と振興に寄与するものとして実施しています。
 今回は、48件の応募作品に対して厳正な審査を重ねて受賞作品を選定し、最優秀賞1点、優秀賞該当なし、入選5点、奨励賞1点となりました。

【総評】

 今年の学生照明デザイン競技の公募テーマは『「食を彩るあかり 」 ~ あなたの“食の時間”を照らす照明器具』」をテーマに、照明「器具」の意匠デザインを通して、LEDの可能性と「あかりのもつ情緒性・空間演出力」を探ることを目的に実施した。
 最優秀賞は、問題なく決定したが、優秀賞以下の作品の選考に手間取った。それは今回AIによる作画と見られる作品が多く応募されたことに起因する。AI作画では異なるプロンプトであってもAIによる近似データ参照により、表現が近似した作品があったためで、今後のデザイン競技における課題を提起したものでもあった。また、「デザイン競技」であり、アイデアは良いものの審美性や意匠の完成度に疑問の残る作品もあり、優秀賞が該当なしとなった。
 本学生照明デザイン競技は次年度以降も続けられるものであり、今年の結果を含む過去の入賞作品とその評価結果の蓄積が、次年度以降の学生照明デザイン競技のレベル向上につながることを一層期待するものである。

照明学会関西支部
学生照明デザイン競技2025企画運営委員会

*ここをクリックすると、下記の表内のプレゼンテーションシートのアイコン画像を拡大したものを参照可能です。

◆最優秀賞 1点◆

作品名 所属 受賞者名 プレゼンテーションシート
最優秀賞 Relight Tray 大手前大学 萩原 凛
講評
 看護師であるお母さまの話から、入院を余儀なくされた患者の病気と闘う上で食べることは、とても重要なことで、食欲を増進させ、「光でもう一度生きる光=希望を感じてもらう」というコンセプトに企画の独自性、社会的価値、技術着眼の新しさ、斬新性が他の作品よりも高く評価された。暖色系の色が食欲増進につながるため有機ELディスプレイを内蔵し圧力センサーを組み合わせて食事の進み具合から赤から黄へと変化するアイデアやトレーをスマホに連携し写真を取り込めば完食すると、子どもが好きなキャラクター、家族や思い出の写真が光の中に浮かび上がるようにすることもできるなど、これは「食べることができた。」という達成度を「見える化」することにより励みになるなど患者目線の仕掛けも面白いものがある。
 病院の食事トレーという制限があり意匠性という意味では、普通の評価となるがそれを越えた社会的価値の評価が大きな意味を持った作品となった。

◆入選 5点◆

入選 形状変幻のいろどり 立命館大学 早田 海那美
講評
 食事の進行に合わせて光の形状が変わるという発想は大変ユニークであり、それを実現する技術的提案も説得力のあるものである。しかし、白黒反転の線画では表現されていないが、現実空間では相互反射により一定の間接照度が存在する。このため、点灯されていないLED光源が視認される可能性が高く、ドローンショーのように発光部のみが認識されるとは限らない。この点に対する言及があればより高い評価を得られたものと考えられる。
入選 食TOMOくん
‐食卓を『共』にする灯しび‐
大手前大学 松原 由采
講評
 食卓の中心性をつくる要素として企画された人形型のあかりである。音声センサーを内蔵し、一人の食事、一家団欒にも呼応するあかりとなっており、個別化しがちな現代の食の場への働きかけ視点を評価した。照明を中央に置くことでランタンの様な明かりは施されているが、食の場のあかりとしては更なる要素が必要であろう。AIを用いたアイデア表現では客観性が確保し易い。それ故、企画の練り上げ自体を充実する姿勢が増々重要になると考えている。
入選 ひとくちランプ 大手前大学 江藤 莉彩
講評
 個々に取り分けるあかりという食の場への新たな要素提案を評価した。中央のあかりが個々手元に移動することで、食の視認性やテーブルの中心性は変化するため、更なる照明が必要であると考えられる。AI作画では異なるプロンプトであってもAIによる近似データ参照も起こり、表現が近似し作品個性に課題を残すこともある。また、この照明の隣り合う面仕様がどのようなものか等々、企画上熟考すべき点がAIの客観表現の影で疎かにならないよう心がけたい。
入選 和円(わえん) 大阪芸術大学 大田 真央
講評
 食卓を囲んで分け合う行為を光で可視化した作品である。皿を取る・戻すという動作がそのまま光の表情を変える仕組みは、照明を"行為と情緒をつなぐ装置"として捉えた優れた提案である。皿が重なり合って生まれる光の造形は美しく、素材や大きさが変われば新たな光景が立ち上がると想像が広がる点も魅力的である。皿の有無で光が変化する構成は実現性も高いが、さらに光源自体が応答して変化する要素が加われば、より深い表現へと発展する可能性がある。
入選 Hapikaru 滋賀県立大学 田丸 ひより
講評
 ケーキプレートの縁にLEDライトを内蔵し、重量センサを組み込むことによって、食事中と食後におけるプレートの縁の色を変化させ、光で気持ちを表現し、食べる・祝う"時間"を楽しむことができるという発想を評価した。一方で、ケーキを照らす光色が最適なのかについて更なる検討が必要であると感じた。また、ケーキプレートに限られているため、照明器具としての意匠面も課題として残る。

◆奨励賞 1点◆

奨励賞 Meal Flow Liner 大手前大学 海原 優花
講評
 学生の健康を支える「光によって食の選択を導く」という発想は革新的で、学生食堂に新しい価値をもたらしている。八の字曲線の照明ラインは導線として美しく機能し、さらに食材の魅力を際立たせる色温度やDUVの調整可能な超小型スポットライトによる柔軟な演出が空間に豊かな表情を与えている。学生の健康をサポートした快適性と機能性を兼ね備えた非常に完成度の高い照明デザインであることを評価した。